2020.12.01 -ESSAY

那須で出会ったあのおじさん今頃何してるんだろう

学生の頃に車で那須へと向かった時、休憩がてらどこかのお店に入った。一人のおじさんが切り盛りしているであろうお店で、軽くコーヒーも出している。美味かろうが不味かろうが、僕にはどうでもよかった。

端の方にはチープな椅子に昔の洋食屋さんにありそうなテーブルクロスを纏ったテーブルがポツンと佇んでいる。そこに腰をかけると、おじさんが徐にコーヒーを持ってきて、開口一番「学生さん?一人で来たの?」と僕に尋ねてきた。

正直こういうお店に一人でいるときはあまり喋りたくない性分で、マスターと話したい時は自分から話したいものである。そんなことを考える隙もなく気さくっぽい感じで話しかけてきた。

「大学生です。誘う友人もいないので一人で来ました。」と答えると、「もっと親に感謝しなさいよ。」と言ってきた。大きなお世話とはこのことかと少し腹が立つも、「そうですね。ありがとうございます。」と返して、おじさんは定位置に戻っていった。

まず会って数分の人間に対して、恰も僕がそうじゃない言い回しをすることが考えられなかった。感謝は自分で決めればいいし、それをわざわざ公にする必要もないと思う。だから、「もっと感謝しなさいよ。」と見ず知らずの人に言うってことは、相当自分を棚に上げないと発言できない言葉な気がする。でも、おじさんがマダムの集団や夫婦のお客さんと会話をする時には、まるで態度が違う。

大学生に何か恨みでもあるのかと懐疑心に苛まれた。一切心当たりがないが、何故か僕だけ明らかに態度が違う。軽くコーヒーを飲んで目的地に向かおうと思っていたから別にいいやと思ったが、それでも腑に落ちなかった。

しばらく会話を聞いていると、「若い人はそうだよね。」とか「お年寄りはそうだよね。」など、世代区別みたいな話しかしないのである。なるほど、そういうことか。

全然落ち着かない気持ちが早く車に戻ろうという気持ちへと変わり、そそくさとコーヒーを飲み干しお会計を済ませた。レジを打っている時に、何か一言置き土産でも置いていこうかと思ったがそれはやめた。

こんな年齢になってもデリカシーがない人間っているものか。単純に年齢が二回りも違うだろうから、上からモノを言いたくなる気持ちも分からなくもない。でも、会って数分の見ず知らずの人にいきなりその態度をしてしまうのは失礼である。こんなおっさんにはなりたくないと、凍える風の中すくめながら足早に車へと戻った。

お店の中ではそこまで気に留めていなかったが、運転してしばらくすると段々腹が立ってきた。見ず知らずのおっさんに何であんなことを言われなければならないのか。その瞬間、反面教師という言葉の意味を少し理解することができ、人との距離感を感じ取れるように心がけようと初めて思った。

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