2020.10.16 -ESSAY

自己啓発本とやらにゾッとした

以前、とある人からこの暇な時間で本を読んだほうがいいと言われ、その人と交流のある企業の社長が書いた本を頂いたことがある。いわゆる自己啓発本で、こんな本を人生で一度も読んだことがないし、そもそも興味すら持ったことがない。でも、逆に少しだけ新鮮だと思って試しに読んでいった。

仕事を通して幸せになる方法や未来の自分を変える習慣みたいなことが書かれており、悪く言うと都合のいいことがズラズラと並んでいる。最初は著者の理想論が書かれているくらいで半バカにして読んでいたが、途中からよくこんなにも前向きな言葉がポンポン出てくるなと寒気を感じた。

僕の捉え方がおかしいのかもしれないが、「何通もの手紙を一日に送ると優れた人脈を作れる」や「イメージして未来の夢をリアルに確信しよう」みたいに、ずっと読み進めていくと次第に馬鹿っぽく思えてきた。

当然こういう自己啓発本を読んで、何か変わる人はどこかしらにいらっしゃることだろう。そうでなければ、自己啓発本がここまで流通することはない。現に出版販売額のうち、近年ではシニア向け、自己啓発、ビジネス書の売上が伸びている傾向にある。

NIKKEI STYLEの記事によれば、この売上の背景には人生100年と言われ始めたことから、老後の在り方や理想について「金を稼ぎまくり引退後は南の島で悠々自適な生活」みたいなものから、「ずっと好きな仕事をする」みたいなものに流れていることが大きいとのこと。

前提として、人生が思っている以上に長く続くことが多いという中で、何かヒントが欲しいというスタンスで読むものである。だから、この手の書籍を否定するつもりは一切ない。

ただ、あまりにも表層的なことがズラズラと書かれているので、本当に熱意を持ってこんなことを書いているのかと冷めてしまったというだけ。

この本を勧めてきた人はとある企業の社長で、いつもカリカリしていて、嫌味をズケズケと言ってくる、少し関わりづらい方だったが、当時の僕には物凄く近しい方だった。そして、4冊ほど自己啓発本を貸してくださり、最後の本を読み終えた頃、またその方に会うと「本当にこの本を勧めてきた人か?」と思うほどのぶっきらぼうな態度に、「どんなツラして勧めてきたんだよ」と少し呆れてしまった。

自己啓発本って読んだことを機に、ポジティブな振る舞いで生きていこうとする考えを植え付けさせるものだと勝手に思っていた。でも、この瞬間に自己啓発本って理想に対して物思いにふけるためのツールでしかないのかと感じてしまった。だって、勧めてきた本はポジティブシンキングを助長するような内容にも関わらず、勧めてきた本人が気難しい人だから、下手に読んでいくものではない。

また、著者がセミナーを開催した時の様子がWEBにアップされていて、それも半ば強引に目を通させられた。400〜500人は確実に入るであろう会場で、何時間も幸福や未来についてダラダラと語っていましたが、話し口調と目の表情が自己啓発的なことを発信する人とは思えなかった。

その人自身は、小綺麗なスーツを着てビッシリと髪型を決めた感じの人だった。あくまでも僕の主観でしかないが、目の奥がどうも信頼できないというか、こんな人に励まされているものかと情けなくなってしまった。それにずっとベラベラと幸福とか人脈とか、それっぽいことを永遠と語っている人って、どこか信頼できないなとこの著者を見ていて悟った。

こうして一通り読み終えてから4ヶ月。ふとこの本を思い出し、もしこの手の本を鵜呑みにし過ぎて生活している人がいるとしたら、果たしてどんな人物なのだろうかとを思い浮かべてしまったのである。

ゾッとした。

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